恐竜ってどんな生き物?

2.獣脚類

竜盤類のもう片方の恐竜たちです。この仲間には非常に多種多様な恐竜が含まれています。史上最強の陸上生物と言える動物食恐竜「ティラノサウルス・レックス」や泳ぎの上手な「スピノサウルス」、時速80kmも出してしまう「オルニトミムス」、オルニトミムス類の中には巨大な前肢の爪をも持った「デイノケイルス」なんかもいます。ムササビの様に木から木へ滑空して渡る「アーケオプテリクス」や原生鳥類の祖先候補No,1「アウロルニス・シュイ(Aurornis xui)」等々、挙げればきりがないほどです。獣脚類=動物食というイメージが長きの間ありましたが、実は完全な植物食だったであろう恐竜も発見されています。オルニトミムス類の恐竜たちのほとんどが雑食か植物食だったと考えられています。そしてこの獣脚類の中から現代の鳥類が発展してきたのですから、生命の進化というのはミラクルです。そして体の大きさの幅も驚嘆するものがあります。僅か20センチほどの体格から13メートルもの巨体まで、さまざまな大きさの成体が存在していました。

下の写真のように動物食恐竜の歯は手前側に大きく湾曲しその内側や外側にはノコギリのようなギザギザ(鋸歯と言います)が付いています。スピノサウルス科等は鋸歯がありません。これは主に魚類を食べていたからだと推測されています(私たちが食事に使う「フィッシュナイフ」もギザギザが付いていません)。実際にノコギリエイの仲間であるであるオンコプテリクスのノコギリの歯である皮歯が下あごに刺さったままの化石が出土しています。

ところで、骨盤と大腿骨が関節している部分には恐竜のみに存在する特徴があることをご存知でしょうか。この関節部分のことを寛骨臼というのですが、恐竜はこの部分に穴が開いているのです。

恐竜の寛骨臼
こちらはタルボサウルスの寛骨臼。骨盤に大腿骨がはまり込むための大きな穴が開いています。

爬虫類や私たち哺乳類の寛骨臼は穴ではなく窪みがあり、その部分がソケット状になっています。この寛骨臼の穴は恐竜の祖先と考えられている鳥頸類のラゴスクスにもありました。この穴はどの様にしてできるのでしょうか。恐竜類である鳥類の「ダチョウ・ウズラ・ニワトリ」を使った最近の研究で、胚の初期段階から寛骨臼の穴が形成されることが解ってきました。全身の骨組織は胚の段階でまず軟骨成分が現れ始め、その後骨を形成していきます。その途中で関節となる部分にインターゾーンと呼ばれる細胞群ができてきます。このインターゾーンからは軟骨成分を阻害(作らせない)するたんぱく質を分泌します。鳥類は特にインターゾーン細胞群由来のタンパク質に敏感に反応することが判明しました。この反応でインターゾーンの部分の軟骨が無くなってしまうことにより寛骨臼に穴が開くことが確認されました。鳥頸類はこのような突然変異を起こしたことで、主竜類の進化の過程で特異な骨構造を獲得したのでしょう。この事により恐竜類は直立歩行が可能になり、且つ以前とは比べ物にならないぐらい大腿部に大きな筋肉をつけられるようになったのです。この研究は東北大学大学院生命科学研究科/江川史朗博士研究員らのグループより2018年に発表されています。

ここで恐竜類が他の爬虫類と違う点をいくつか箇条書きにしてみます。

  1. 恐竜類の骨組織の内部には「ハバース管」という骨に血液を送る管が恒温性動物である哺乳類と同じように密集しています。このことは恐竜類の特徴の一つです。もちろん恒温性である現代の鳥もハバース管が密集しています。しかし変温性である現在の爬虫類や絶滅した爬虫類の仲間はこのハバース管が密集しておらずまばらに分布しています。
  2. 呼吸システムが根本的に違います。恐竜類は同じ主竜類から分岐したワニやカメとは全く違う気嚢という呼吸システムを持っています。このシステムは現代の鳥たちも持っています。これはおそらく地球上で最も高効率であり、最も進化した呼吸システムです。哺乳類が持つ横隔膜と肺の組み合わせよりも数倍効率が良いのです。体温維持を自ら行わない行動的ではない変温動物にとっては宝の持ち腐れで、まったく必要のないものです。この気嚢はどの様にして獲得したのでしょうか。中生代はじめの三畳紀からジュラ紀前期にかけての低酸素時代に獲得したのだろうと推測されていますが、これは未だもって謎なのです。
  3. 暢思骨(ちょうしこつ_叉骨とも呼ばれます)がある。恐竜類特有(竜脚類など一部は持っていません)の骨で他の生物には存在しません。
  4. 四肢が真っすぐ伸びている。これは運動能力の差として大きな違いです。また、運動能力が高いということは常に高いエネルギー代謝が必要だともいえます。
  5. 大腿骨の骨頭(大腿骨の上側の端の部分)が骨盤の寛骨臼と呼ばれる部分を貫通している。
  6. 一部を除く恐竜類は産んだ卵を自らの体温で温める(他の爬虫類は土に埋める等して産んだまま放置します)発掘した化石の中に温めている様子が分かるものが多数出土しています。また、一部の獣脚類のタマゴに色がついていることが分かっています。これは自分が産み落とした卵を抱卵と保護をするために他の種のタマゴと区別するためと考えられています。産んだ卵を放置する他の爬虫類のタマゴは白色です。
  7. 1.2.4.5の理由から恐竜類は恒温性である。他の爬虫類は変温性で自らの力で体温調節ができません。

上記のことだけでも恐竜類が特別な種であると分かります。2億年以上もの長い間、地球上で食物連鎖の頂点に君臨し続けた地球史上稀にみる生物なのです。

次回は鳥盤類の恐竜についてです。

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