トロオドン科のタロス・サンプソニ(Talos sampsoni)はおよそ7600万年前に北米大陸に生息していた恐竜です。トロオドン科はデイノニコサウルス類に属する恐竜で、形態上の大きな特徴に後肢の第2趾が上下に稼働する鉤爪状になっていたことが挙げられます(自分の足の人差し指の先端爪部分が手前側に90℃程反り返るイメージ)。この鉤爪は何の為にあったのでしょうか。多くの意見に「狩りの時に獲物の体を切り裂くためだ」というものがありました。けれども果たして本当にそうでしょうか。実はこの鉤爪の形状がどうにも肉や皮を切り裂くことなど到底できない構造なのです。肉や皮を切り裂くにはナイフのような薄くて鋭利な構造でなければなりません。ところがこの鉤爪はずんぐりとして分厚いのです。とても鋭利な刃物には見えません。よって肉や皮を切ることすらできませんでした。刺すことぐらいはできるでしょうが……では何のためにあったのか。彼らは自分たちよりも数十倍もある巨体の獲物を狩っていたようで、体が小さなデイノニコサウルス類は獲物の首のあたりに致命傷を負わせるために背中等に飛び乗り、この鉤爪を獲物の皮膚に突き刺して自分の体を支えていたのではないか、そのように思うのです。