ーTroodonートロオドン  Stenonychosaurusステノニコサウルス

私の中でトロオドン科の恐竜は「トロオドン科=北米大陸」というイメージが強烈すぎて頭から離れませんでした。実はアジア(日本もです)でもトロオドン科の恐竜たちがたくさん見つかっています。ところでこのトロオドンの学名に(?)がついてしまいました。何が起こったのか……もともとこのトロオドンという恐竜は歯化石しか発見されていませんでした。そしてその後この歯にそっくりな歯を持つ化石が複数体発見され「ステノニコサウルス」と命名されました。このステノニコサウルスはトオロドンのシノニム(別名のようなもの)とされました。この段階で「トロオドンTroodon」が正式な学名となったのです。その後2017年にこのステノニコサウルスの中で骨盤の形が違う個体があることが判明します。この骨盤の形の違うステノニコサウルスは「ラテニヴェナトリクスLatenivenatrix」という学名として正式に命名されました。そこでこの事により以前「トロオドン」と呼ばれていた恐竜は「ステノニコサウルスStenonychosaurus」と「ラテニヴェナトリクスLatenivenatrix」に分けられ、トロオドンという表記自体がなくなってしまったのです。なんだか残念です。トロオドンという名前、好きだったのですよね……

そんなトロオドンですが(しつこく学名に反しています)、彼らは寒い寒い北極圏(現在のアラスカ辺り)にも生育分布していたのですが、そこに住んでいた個体は他の北米大陸のものよりも2倍ほど大きな化石が見つかっています。大きさが2倍もあった理由が何だったのかは明確に解明されていません。ただ一つ言えることがあります。それは目の大きさです。トロオドンは比較的ほかの種に比べて目が大きかったのです。大きな目は当然のことながら入ってくる光の量も多くなります。それは暗視能力が高かったということです。高緯度の北極圏の冬はまったく陽が昇らない極夜になります。そんな真っ暗な季節でもトロオドンは十分に目が見えた可能性が高いのです。北極圏での生態系の頂点に立っていたトロオドンは、食物に困ることなく一年中過ごせたのかもしれません。

ところで、こんな画像を見たことがないでしょうか? これは「デイノサウロイド(Dinosauroid)」というトロオドンが人類のような高度な知的生命体になったかもしれないというものです。SFチックですが、実のところトロオドンはとても大きな脳を持っていたことが分かっています。化石で発掘された脳頭蓋の中にあったエンドキャストという堆積が詰まって固まった塊の体積を図ったところ、対体重比がT-レックスの約6倍もありました。恐竜界随一の大きな脳を持っていたのです。だからと言って人類のような知的生命体になったかもしれないというのはちょっと話を盛りすぎていると思いますが……