-Borealopelta markmitchelli- まるでミイラ!のような恐竜化石「ボレアロペルタ・マークミッチェリ」

2011年、カナダ・アルバータ州・フォートマクマレーの炭鉱で鉱山作業員が発見した化石が、もはや化石の域を超えているのです。それは、2017年5月12日にカナダのロイヤルティレル博物館で公開されたノドサウルスの化石です。このノドサウルスは約1億1200万~1億1000万年前の白亜紀中期ごろに生きていたとされる全長5.5メートル、体重1.3トンの植物食恐竜です。鎧竜の仲間であるけれど、アンキロサウルス科のような「こん棒状の尾」を持っていません。また、お腹側には鎧状の皮膚はありません。肉食恐竜に襲われた時、足の鈍いノドサウルスは身を屈んでじっと耐える他なかったのでしょうね。もしかしたらアルマジロのように体を丸めて防御をしていたのかもしれません。
それにしても、まるでミイラのようなこの化石。氷温の海底の泥の中に埋もれていたというのですが、いくら氷温で無酸素状態に近かったとしても、果たして1億1000万年もの気が遠くなるような時間の中で、たんぱく質が石化して残るなどということがあるんでしょうか? にわかに信じられません。昔、世界中で「プレシオサウルス」などの海生爬虫類の目撃情報があったことを思い出さずにはいられません。もしかしたら、このノドサウルスは最近まで実際に生きていたのではないか? などと思いを馳せてしまいます。

2020年6月、「ボレアロペルタ・マークミッチェリ」の最後の食事風景が明らかになりました。ロイヤル・ティレル古生物学博物館での胃の中の内容物の解析が終わったのです。複数の小石と共に主に1種類のシダ植物の化石が特定されました。このことは、「ボレアロペルタ・マークミッチェリ」は数あるシダの中から特定のシダだけを選んで食していたことになります。そしてさらに驚くべきことに、このシダ化石の葉の裏にある胞子のうが成熟していることが判明しました。また一緒に飲み込んでしまったであろう小枝の年輪から、季節が初夏から盛夏にかけての時期であることも推測できました。そしてこの食事の数時間後に死亡したということです。ところで、胃の中に石があったということは、胃石ということです。これは「ボレアロペルタ」がシダを歯で梳いて(すいて)からそのまま飲み込んだと推測できます。実は日本の「福井県勝山市北谷 恐竜化石発掘現場 手取層群赤岩亜層群北谷層 (白亜紀前期 約1億2000万年前)」でノドサウルスの仲間の歯の化石が発見されています。この形状からも植物を梳いて(すいて)丸のまま飲み込んでいたことを推察できます。そう言えばディプロドクス科の恐竜たちも同じように植物を梳いて(すいて)飲み込んでいたようです。
この「ボレアロペルタ」はまだまだ新しい発見があるかもしれません。本当に貴重な化石です。

ー福井県立恐竜博物館: FPDM 提供ー

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